2013年10月21日月曜日
特許権の効力
現在、弁理士試験の最終試験(口述試験)の最中です。なので、たまには特許法について書きたいと思います。
【特許権の効力について】
特許法第68条は「特許権の効力」を規定しています。
特許法第68条
特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を有する。ただし・・・(以下省略)
つまり、特許権者は特許発明を独占的に実施する権利を有します。これが特許法上の「特許権の効力」ですが、より広い意味の「特許を取得することの効力」について考えてみます。
【特許を取得することの効力】
ある商品の広告に「特許取得済」の宣伝文句が付されていたら、どんな感じがしますか?
何か新しくて、斬新なもののように感じるのではないでしょうか。
特許権を取得することで商品が魅力的なものであるとお客さんにアピールできるなら、それも特許権の一つの効力と言えると思います。
【事例紹介】
先日、テレビを見ていてたら、特許を取得した「ブライダルギフト時計」が新郎新婦から両親へのプレゼントとして人気を集めているとのことです。
「つながる木目は家族の絆」
「一枚の板から作る結婚式に両親へ贈る3連時計 特許取得済」
などのキャッチコピーがあります。
【発明の解決課題】
本件の特許掲載公報(特許第4927988号)を特許庁電子図書館からダウンロードして読んでみました。
明細書の段落【0007】には
「・・・本発明が解決しようとする課題はこの点であり、2個ないし3個が互いに関連した外見を呈して絆を助長することが出来る木製の置き時計又は掛け時計を提供する。」と記載されています。
【課題の解決手段】
特許請求の範囲の【請求項1】には
「・・・そして一組と成る複数個の時計本体の表面に形成される木目は互いに連続した木目を形成し、個々の時計本体の表面には時を刻む針を設け・・・たことを特徴とする木目を形成した一組の木製時計。」とあります。
下線を付した箇所で特に赤い文字で表した構成(・・・複数個の時計本体の表面に・・・互いに連続した木目を形成)がポイントの一つと思われます。
【実用新案登録に基づく特許出願】
特許掲載公報によれば、本件は実用新案登録出願がされ、その後、実用新案登録に基づく特許出願がされたようです(特許法第46条の2)。
実用新案登録出願は、基礎的要件の審査のみで早期に登録されるというメリットがある反面、新規性や進歩性などの実体的な要件について審査がされないため、権利の安定性に欠けるというデメリットがあります。また、実用新案権は存続期間が出願日から10年であるのに対し(実用新案法第15条)、特許権の存続期間は出願日から20年と長期にわたります(特許法第67条第1項)。
おそらく、この会社は実用新案登録後、商品を売り出したところ、ブライダル業界で話題となり人気が出たため、安定的且つ長期の特許権を取得したいと考え、このような戦略を取ったのではないかと考えらえます。優れた戦略だと思います。
【感想】
特許出願というと何か難しい言葉が使われていて分かりにくいという印象をお持ちの方が多いと思います。また、特許を専門とする弁理士も、ややもすると法律上の規定(たとえば上記「法上の特許権の効力」)に捉われがちです。
お客様が特許出願をする意味を深く考え、お客様とともに最善の戦略を考えるのが弁理士の重要な役割の一つであると私達は考えています。「木目を形成した一組の木製時計」に関する上記出願は、このことを再認識させてくれる良い事例ではないかと思います。Y.S.
